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スマートテレビ

アナログ放送から地上デジタル放送(地デジ)へ…というと、もう過去の話題になってしまった感がありますが、岩手・宮城・福島の3県においては、この3月31日でアナログ放送を終了し、地上デジタル放送に移行いたします。これで、日本全国完全移行となります。もちろん東日本大震災の影響によるものですが、様々な点で復旧がまだまだの地域も多いと聞きますので、被災された皆様の生活に影響がないのかと少し心配が残ることは否めません。

ところで、先日、パナソニックは2012年3月期の連結業績予想で最終損益が7800億円の赤字になると発表しました。またパナソニックだけでなく、ソニーは2200億円の赤字予想、シャープも通期純損益は大幅な赤字になると発表ています。これら3社に共通するのは、テレビ事業へのシェア・依存度が高いこと。テレビ業界の中でも黒字確保したのは東芝・日立製作所・三菱電機ですが、東芝は社会インフラ事業の堅調がテレビ事業の赤字転落をカバーし、日立製作所はテレビの自社生産を2012年1月に撤退したことで切り抜け、また、三菱電機は家電事業の社内シェアが高くないことが、全社的な業績を守ったということのようです。

この明らかなテレビ事業の不振は、地上アナログ放送終了後のテレビ需要の急減と、世界的なテレビの販売不振、そして円高進行やタイの洪水の影響、それに韓国・台湾等国外家電企業の台頭という原因に基づくようです。シャープが3月27日に、台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業グループとの資本業務提携を発表しましたが、主力の堺工場に4300億円を投資しつつも世界競争と急激な円高に敵わなかったことは、その象徴とも言えるのでしょう。

さて、そのような状況の中、家電各社が活路を求めているのが『スマートテレビ』なる次世代テレビです。そもそも『スマートテレビ』という言葉に明確な定義はありません。米国では『スマート』という言葉が好まれる傾向にあります。従来製品よりも多機能で使い易く工夫されたものであれば、そう呼んできたとのことで、スマートと言えばすぐ思い浮かぶ、皆様ご存知のスマートフォンも、実はその一つです。

では、そんな『スマートテレビ』の機能とは?というと、WEBブラウジング機能は既に搭載製品が出ていましたが、インターネットに接続し好みの番組や映画などを楽しめること、また、今後、スマートフォンのようにアプリをネットから直接ダウンロードして機能を増やせること、それからパソコンやスマートフォンで馴染みのあるクラウドサービスへの対応、スマートフォンとの連携機能…などの可能性が考えられるようです。それらは、極論すればパソコンやスマートフォン等IT機器への転換のようでもあり、はたまた良く言えば、それらとの融合とも言えるかもしれませんが、大画面スマートフォンと呼ばれて終わることなく、テレビの特色をどこに発露させることができるのか?…まさにアイデンティティ問題なのかもしれません。

ところで、4月2日から民放5局などが、放映時間に関係なくいつでも視聴できる『ビデオ・オン・デマンド(VOD)サービス』を開始します。それはまさにスマートテレビの世界への入口。翻って現在の映画とテレビの共存状態を考察するに、スマートテレビというものの将来には、ソフト・コンテンツと、その著作権など法的関連スキームをどう戦略立て舵取りするのかがキーとなっていくのでしょう。

一方で、3月29日、官民ファンドの産業革新機構が、出版業界が設立する電子書籍事業会社に最大150億円を出資すると発表しました。また、その前日には、三井物産・東芝・NEC・日本政策投資銀行の4社が、トッパングループ系の電子書籍ストア運営会社に資本参加し、電子書籍事業を共同して強化するとの発表がありました。映画やテレビの画像や音楽の世界に限らず電子書籍の世界も、いま劇的な速さで流動しています。この行方も、興味深いところで見逃すことができません。最近、通勤電車内でもスマートフォンで読書する人が目立つようになりましたが、本好きの日本人にとって、電子書籍がテレビの救世主になる可能性も否定できません。

「テレビばかり見てないで、本も読みなさい!」…かつて子供のころ、母親にそう叱られた記憶が懐かしく蘇ってきますが、もしかすると近い将来、大画面テレビは教科書・参考書・副読本・問題集の複数Windowを同時に広げるに最も適しているとして、「テレビで本を読んで、もっと勉強しなさい!」…と子供たちが叱られる時代が来るのかもしれません。

いえいえ大画面をついそう捉えてしまう私の認識が淋しい限りかもしれません。その失礼をお詫びするとして、ここは、もっとダイナミックな発想によるスマートテレビの将来に、大いに期待するといたしましょう。

2012/03/31