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今や通信端末は、ビジネスに限らず、生活の重要な位置を占める時代。そんな中で、昨年末から通信障害が相次いで話題になりました。先日は、東京都心で約5時間にわたり通話やメールの送受信がしづらくなる障害が発生。また、昨年12月には、相手に届くメールアドレスが他人のアドレスに置き換わり、受信者がそのまま返信すると見知らぬ人にメールやアドレスなどが送られてしまうという事態が発生しました。総務省は、これを「通信の秘密侵害」と認定。通信障害や通信上の問題は、弊社にとっても重大な関心事です。
通信事業者自身のサイトによれば、昨年末のものはスマートホンモードのサーバでの輻輳に起因して、電話番号とIPアドレスの関連付けにアンマッチが発生とのこと。また、先日のものは、スマートフォンのアプリケーション(VoIP(Voice over Internet Protocol)、チャット等コミュニケーション系)が急激に普及したことに伴い、ネットワーク上の制御信号が増加し、そのような状況の中で新型パケット交換機への切り替えを実施したため、制御信号がパケット交換機の処理能力をオーバーフローしたことが原因と発表しています。
携帯電話会社であれば端末数を把握しているので、通信量は予測・想定可能なのでは?と思いますが、スマートホンの場合、取り込まれたアプリケーションが、操作していないときでも「制御信号」と呼ばれる細かな通信を繰り返しているという特徴があるようで、特に無料で取り込まれたアプリケーションは把握できないことが理由のようです。
制御信号とは、スマートフォンから発信されるネットワーク接続を確立させるための信号です。スマートフォンにインストールされた個々のアプリケーションごとに、ある一定時間で接続を試みようとするものです。Android OS自体でも28分毎に制御信号を発信しますが、VoIPアプリケーションでは3~5分毎の頻度で制御信号を発信するとのこと。また、パケット交換機との伝送経路の不具合などで接続不能の状態になると、端末が一斉に制御信号を発信するとのことです。ちなみに携帯電話では、周波数を有効利用するため、論理的なセッションは維持していますが、無線レベルでは通信が終わるたびに切断しているとのことです。
さて、今回のパケット交換機の新旧型切替では、処理可能なトラフィックを、同時接続数は88万から180万に増やしたのに対し、1時間あたりの信号量を2750万から1410万へと約半分に減少させていました。時流から考えるとこの設定はまったく腑に落ちませんが、旧型交換機ならば今回のトラブルは発生しなかった可能性があります。スマートフォンの仕組み・リスク検証不足が、落とし穴になったということのようです。
携帯電話会社は、今後、インフラ整備とともに、アプリケーション開発側へも訴えかけていくとのことです。OSの開発元やアプリケーションを開発するソフトウェアメーカー、GSMA(通信方式GSMの普及を促進する団体)等の関係団体に対して、頻度の高い制御信号の発信を控えるよう提案していく対策も公表しています。しかし、Androidがそもそもオープンソースであるため規制が難しいと想像されることと、何より、元来コミュニケーション系アプリケーションが問題であることを見つめると、それを求めている人間の心理から考え直す必要も感じずにはいられません。