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前回に引き続き株券の電子化、その中で、株式担保に関してもう少し取り上げてみます。少し専門的になるかもしれませんが、実務上注意が必要な部分ですので。
銀行等の金融機関でもそうですが、現行の実務上、株式担保はそのほとんどが『担保差入書』作成と株券の占有だけで行われている略式担保と呼ばれるものです。株券発行会社に担保権利者として登録をする登録担保と違い、簡単で低廉、かつ株券発行会社に担保差し入れを知られないという信用失墜を招かず(匿名性と呼ばれています)、しかも、第三者対抗要件を具備しているという便利なモノでした。株券が有価証券であるため、詳細は不明確のままでも、株券さえ占有していれば良いという発想からの実務慣行でした。しかし、電子化を目前にしたこれからは、約定、株券の名義、差入先、権利の性質等を明確にしなければならなくなります。
その一つが、担保の法的性質です。具体的には、質権なのか譲渡担保権なのかということです。その違いは、任意売却や所有権取得が認められるかどうかという点で異なりますが、実際には契約上の手当てが可能であることから、それほど大きな違いはないといわれています。また、過去において有価証券取引税の課税対象になるかどうかも大きな相違点でしたが、現在の税法ではそれは廃止されて相違点ではなくなっています。
さて匿名性ですが、これは新しい株券電子化システムにおいても、維持されるようです。証券保管振替機構が間に関与することで、その点を引き続き可能になるように設計されています。やはり、金融実務界からの要望が一番大きかった部分だそうです。
いずれにせよ、この株式担保実務は、ある程度ファジーな点を残しても通用していたアナログ慣習が、デジタル化により通用しなくなった、というところなのでしょうか。対応した新契約書も関係界で公表され始めました。何事も明確にしなければならなくなった以上、手間と時間がかかり、入担障害とリスクが増えたことは事実のようです。
さて、最後にここで念押ししておかなければならないことがあります。今回の電子化というものはあくまで上場企業だけのことであり、非上場企業については現行どおりです。この点をくれぐれも皆様、お忘れなきように!