ブログ…弊社秘書・スタッフの随想・メッセージ・独り言・・・。
長かった夏休みも終盤に差し掛かった最後の週末、高校1年生の娘と二人で東京に行って参りました。と言っても、遊びにではなく・・・少し気の早い話ですが、娘の志望する学校のオープンキャンパスに。
雨の予報がやや気がかりではありましたが、娘の志望する学校は全て東京にあり、オープンキャンパスや芸術祭の時期もバラバラ・・・これを逃してしまっては後で後悔すると雨を追いかける形で向かうことにしました。
新幹線の車内では日常の忙しさを忘れ、旅行気分で車窓の景色と会話を楽しみながら、あっという間に東京駅へ到着しました。ここから目的の学校までは電車とバスを乗り継ぎ約1時間・・・緑豊かなその地に憧れの学校はありました。さっきまで雨がザーッと降っていたかと思うと、一気に光が差し、ワシワシワシ・・・と蝉の声・・・あれ?大阪ではもう耳にしなくなったはずなのに、東京ではまだ夏真っ盛りの様子で鳴いている・・・気候の移り変わりのせいなのか・・・生息している蝉の種類の違いのせいなのか・・・そうこう考えているうちに学校の門に到着しました。
門をくぐると真っ直ぐ伸びた一本道・・・更にその先を進むと正面には一際ハイセンスな建物が立っていました。これが大学の中だとは決して思えないほどの洗練された場所・・・そこは学校が誇る美術館、そしてその奥に併設された建物こそが美術・芸術あらゆる方面の貴重な資料が重々しく並び、それをも芸術を感じさせる・・・いわば学校の中枢的存在である図書館でした。
残念ながら撮影禁止でお見せすることはできないのですが・・・ 外観はガラス張りで周りの木々が見事に映り込み、まるで森の中に居ながらにして本を読んでいるような設計になっていました。中も木のぬくもりと、ゆったりとした最先端の空間デザインの融合が素敵な、渦巻き状の平面計画によって目的の本を探そうとする検索性と探しているうちに偶然新たな本と巡り合うような散策性を狙った作りになっていました。どこを取ってもお洒落で粋なデザイン・・・こんな空間で毎日学んでいると自分の腕も自分自身もきっと磨かれていくんだろうなぁと確信しました。
学生さんに混じって私たちも学食でお昼を済ませ、午後からは油絵の模擬授業を受けることにしました。講義の内容は油絵に使用する黒色顔料についてでした。
顔料―pigment、特に黒色は大きく3つに分類されるそうです。まず初めに象牙から成る動物性由来のアイボリーブラック・・・こちらは他の物に比べ漆黒が濃いとさているそうです。次に、名前の通り桃やプラムの種核から成る植物性由来のピーチブラック・・・こちらは動物性よりも温もりのある風合いに描けるとか・・・中でもバインブラックと呼ばれるブドウの軸から成るものは大変繊細な茶色がかった色をしていて柔らかいものを描く時に適しているそうです。最後にランプの燃えかすから成る石油系由来のランプブラック・・・これは青みが強くモノの冷たさが表現されるそうです。
この3つを元にもう少し細かく分けられるそうですが・・・例えば人物の絵を描く時に髪の毛の黒、黒目、上着の黒、ズボンの黒、靴の黒・・・どの黒一つ取っても同じ黒はないはずで・・・では一体どの黒を塗るのがふさわしいのかと悩んだ時に、描こうとするものの質感や硬さ、温度を考え、それをも絵に表現していかなければならない、つまりその黒色がどの原材料と似ているかなど考慮して描かなければならないと・・・・・何ともまぁ素人の私には高尚過ぎて半分理解不能でしたが、隣りに座っている娘は意欲的にメモを取りながら先生の話に全神経を集中させていました。普通なら退屈な講義も興味ある話になると不思議と頭に入って来るものです。
時間ごとに刻まれたスケジュールをこなすべく広い校舎を移動していると、思い思いの制作活動をする学生の姿、またこのクオリティの高さに終始娘は興奮気味でした。その道を目指す者たちが集まる芸術の森・・・そこで受けた刺激は今後の気持ちや行動に大きな影響を与えてくれたと思います。
これから秋も深まり、本格的に『芸術の秋』のシーズン到来です。学校とアートスクールの両立は体力的にも大変厳しいですが、次は来月の芸術祭を楽しみに、まだまだ娘の制作の日々は続きます・・・。