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ブログ…弊社秘書・スタッフの随想・メッセージ・独り言・・・。

関西の遅い春 ~東大寺二月堂・お水取り・2012~

「関西の方ですか?」 と、突然、隣に立つ人が話しかけてきました。
「はい、そうですが…」 

「まだ始まりませんか?」
「まだまだ、あと1時間半ほどありますょ」
「そうですか、まだそんなに。しかし奈良は寒いですね。東京も今朝は雪が降っていましたが、夕方の奈良の方が寒く感じます。もっと、冬物の厚手のスカートにすれば良かった」

「旅行で来られたのですか?」
「関東からのツアーです。初めてお水取りを観に来ました」
「それにしては、早めに来ないと混雑がひどくて松明(たいまつ)を見ることもできないって、よくご存じでしたね」
「ツアーガイドさんに引き連れられてです。でもこんなに長く待たないといけないのですね」
「実際に燃えさかるお松明が舞台を駆ける時間は30分ほどですけど…。火の粉は厄除けになるとの言い伝えで場所取りは熾烈ですから、諦めるしかないですけど…」

「ところで、これって、世界平和だとか人々の幸せを祈るとか、どのような意味がある行事なんですか?」

「はぁ…、錬行衆という僧侶が二月堂の本尊十一面観音に対して過去の罪を懺悔し、その功徳で、何というかそのような、つまり人々の幸福とか世界の平和とかを祈る修行とかって聞いてますけど…。起源が古く謎の多い行法とも。なんせ1200年以上絶えることなく行われてきたそうで、特にスゴいと思うのは第二次大戦中も、米軍の戦闘機B29の爆音響く中でさえも、火の荒行は決行されたそうですょ。灯りがチラつけば爆撃対象にされることを考えると命がけだったとか…」

「しかし、寒いし、ものスゴい混雑で窮屈だし、おまけに山の斜面。そこに長時間立ちっぱなし、これ何とかなりませんかねェ…」

「そうそう、毎年時々訪れますけど、朝の通勤ラッシュよりキツいです。でも、これこそが、お寺の考えた観衆のための修行なのかもしれません(笑)」

どこかチグハグで噛み合わぬ点もありましたが、いきなりの話し相手に恵まれて、ツラいはずの1時間半はアッという間に過ぎました。東京で主婦をしているといってた彼女は、大学時代の友人と人生久々の関西旅行とかで、待ちかねた古都の火の祭典にジッと見入ったのち、「また東京に帰ったら、月曜日から日常生活です」と言って、ツアーバスの集合時間を気にしつつ名残惜しげに二月堂を去って行きました。その後ろ姿を見ながら、さっきの第二次大戦中のエピソードが心に引っかかって、信仰に棲む人間の弱さと強さというものを改めて考えずにはおれませんでした。

「東大寺二月堂のお水取りが終わるまで、関西に本当の春は来ない」とよく言われます。でも、今年は少し違って、いつまでも寒さが残る遅い春です。

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2012/03/31 posted by